若者の「情報科学・工学離れ」がいわれております。その原因には若者の理工学離れの派生、いわゆる先進国の学生のDr離れ、若者のNEAT性、3K嫌い、エンドユーザ志向、ITが見せつける諸社会悪などいろいろあると思われますが、科学・工学側にも課題があるのではとの思いから、私どもは、平成19年、20年度にそれぞれ「情報科学のルネッサンスを語る」、「情報科学技術のReality」と題したフォーラムを開催いたしました。そして21名の研究者のご意見のなかに、情報科学のパラダイムシフトの必要性のほか、別紙記載のような魅力的な研究教育の分野があることも知り得ました。そこで次は、科学・工学側と学生(大学、高校)及びその周辺側との間に良好なコミュニケーションチャンネルを敷設することの可能性を探ることになりますが、それにはまずは我々自身が装いを新らたにして若者の前に立ち現われることが肝要と考えます。
思えば情報科学の黎明期に、コンピュータの出現は論理の深淵の機械探索の夢をかきたて、論理制御された人工知能に若者は技術開発の夢を託しました。それから半世紀有余、時代はナノの時代に入り、またしても知的デバイスのcombinatorial explosionが予想されます。同様の爆発は、過去、ミリ、マイクロの時代にもあり、技術はそのたびに爆発のエネルギーを巧みに利用して参りました。果して今度はどのような利用があるのでしょうか。それは、過去のサイバー空間を時代の要請のもとで止揚、発展させた新しい情報空間ではないでしょうか。そこには、論理、感情、感性、身体性、リアリティなど、はば広いモダリティにわたる人間が包み込まれるでしょう。
ところで、この新しい情報空間の構築にあたる者を誰が育成するのでしょうか。それこそが理工系情報学科であるとの思いからこのフォーラムを企画しました。