■第5回Kフォーラム

Synthetic Dialogue:対話の分析とシミュレーション
−発声・発話の源泉を訪ねて−

開催日:2004年8月6日(金)〜8日(日)
会場:ホテルアソシア高山リゾート


《 開催趣旨 》
 財団主催で「第5回Kフォーラム」を8月6日(金)、7日(土)、8日(日)の3日間、ホテルアソシア高山リゾートで開催いたしました。激しい雷雨に見舞われ変電所に落雷、20分間停電するというアクシデントもありましたが、そのようなことにもかかわらず、発表の途中でもどんどん質疑応答が行われ、活気に満ちたフォーラムとなりました。
  いまは情報のリアリティについての考察を深めるべきときであると考えます。ここでリアリティという言葉は、「人間の存在に働きかけるもの、あるいは、働きかけること」の意味で使われています。なるほど、デジタル技術の恩恵で、ボーダレス、グローバリゼーションのお手本のようなコンピュータネットワークシステムが展開されました。言うまでもなくこのシステムは、インテリジェンスを基底にしております。それが故に、知能によって恣意的に記号化され、映像化された情報のリアリティについて強い疑念が湧くことがあります。
  また一方では、ロボット技術の革新によってヒューマノイドが開発され、その人工口唇は、高度な音声合成技術を介してなにごとかを人間に語りかけようとしているかのごとく思われます。技術者は、どのようなリアリティをロボット音声に託そうとしているのでしょうか。そこには、個々に成熟させた技術の組み合わせを、直接、リアルな人間の姿に写し込む安易さが見え隠れすることがないでしょうか。
  このようなとき、人間の情報活動の原初の姿に立ち戻ってみることが有意義であると考えます。生身の人間の匂いを漂わす情報活動は、Speech Communicationです。そこで情報活動の中身は何であれ、それをコミュニケーションの概念のもとでセグメント化して、個々のセグメントを「対話」と呼んでみます。この対話は、本来、身体レベルからメンタルレベルまでを含む包括的なものであり、記号の表層のみからではその本質、言い換えればコミュニケーションのリアリティに近づけないと考えます。
  このような、情報活動の萌芽的要素は対話であるという視点から実証的な分析とシミュレーションを通して対話について語り合い、ITやロボット技術の深化に寄与したい。これが、本フォーラムの開催趣旨であります。
  なお、本フォーラムは研究発表会ではなくて、各参加者にご披露いただく話題を中心にブレーンストーミングを行うと言った、あまりプログラムされない討論会であることを願っていることを申し添えます。
世話人代表 福村 晃夫



プログラム(敬称略)
8月6日(金)
開会の挨拶 14:00
実行委員長 栢森 雅勝
(財団法人栢森情報科学振興財団 理事・ダイコク電機株式会社 代表取締役副社長)
挨 拶
及び趣旨説明
14:05
世話人代表 福村 晃夫(名古屋大学・中京大学名誉教授)
コーディネーター 福村 晃夫、武田 一哉(名古屋大学情報科学研究科教授)
1 14:15
「コミュニケーション・パートナーとしてのロボット」
小暮 潔(株式会社国際電気通信基礎技術研究所(ATR)・知能ロボティクス研究所 知能創造研究室 室長)
2 15:15
「分身対話エージェントを実現する表情合成プラットホーム」
森島 繁生(早稲田大学理工学部応用物理学科 教授)
    休 憩
3 16:30 「感性的コミュニケーションへの出発点」
加納 政芳(中京大学生命システム工学部身体システム工学科 講師)
4 17:30 「記号情報と非記号情報 −その本質的な違いは何か?−」
大須賀 節雄(東京大学名誉教授)
    夕 食
  20:00 談 話

8月7日(土)
5 9:00
「非言語情報を活用した音声インタフェース」
後藤 真孝(独立行政法人産業技術総合研究所情報処理研究部門 研究員)
   
休 憩
6 10:30
「音声対話システムの研究」と「音声インタフェースの開発」
小林 哲則(早稲田大学理工学部電気電子情報工学科 教授)
   
昼 食
7 13:15 「パラ言語情報、非言語情報が意味するもの」
筧 一彦(中京大学情報科学部 教授)
8 14:15 「言語理解と行動」
徳永 健伸(東京工業大学大学院情報理工学研究科 助教授)
    休 憩
9 15:30 「シャノンとチョムスキーの間」
稲垣 康善(愛知県立大学情報科学部学部長 教授)
10 16:30 「出力デバイスからロボットの発話を考える」
奥乃 博(京都大学大学院情報科学研究科知能情報学専攻 教授)
11 17:30 「自動車との対話」
武田 一哉(名古屋大学情報科学研究科 教授)
    夕 食
  20:00 談 話

8月8日(日)
12 9:00
「対話の価値構造」
田中 一(北海道大学名誉教授)
  10:00
総まとめ
  10:30
終 了