財団主催で「第5回Kフォーラム」を8月6日(金)、7日(土)、8日(日)の3日間、ホテルアソシア高山リゾートで開催いたしました。激しい雷雨に見舞われ変電所に落雷、20分間停電するというアクシデントもありましたが、そのようなことにもかかわらず、発表の途中でもどんどん質疑応答が行われ、活気に満ちたフォーラムとなりました。
いまは情報のリアリティについての考察を深めるべきときであると考えます。ここでリアリティという言葉は、「人間の存在に働きかけるもの、あるいは、働きかけること」の意味で使われています。なるほど、デジタル技術の恩恵で、ボーダレス、グローバリゼーションのお手本のようなコンピュータネットワークシステムが展開されました。言うまでもなくこのシステムは、インテリジェンスを基底にしております。それが故に、知能によって恣意的に記号化され、映像化された情報のリアリティについて強い疑念が湧くことがあります。
また一方では、ロボット技術の革新によってヒューマノイドが開発され、その人工口唇は、高度な音声合成技術を介してなにごとかを人間に語りかけようとしているかのごとく思われます。技術者は、どのようなリアリティをロボット音声に託そうとしているのでしょうか。そこには、個々に成熟させた技術の組み合わせを、直接、リアルな人間の姿に写し込む安易さが見え隠れすることがないでしょうか。
このようなとき、人間の情報活動の原初の姿に立ち戻ってみることが有意義であると考えます。生身の人間の匂いを漂わす情報活動は、Speech
Communicationです。そこで情報活動の中身は何であれ、それをコミュニケーションの概念のもとでセグメント化して、個々のセグメントを「対話」と呼んでみます。この対話は、本来、身体レベルからメンタルレベルまでを含む包括的なものであり、記号の表層のみからではその本質、言い換えればコミュニケーションのリアリティに近づけないと考えます。
このような、情報活動の萌芽的要素は対話であるという視点から実証的な分析とシミュレーションを通して対話について語り合い、ITやロボット技術の深化に寄与したい。これが、本フォーラムの開催趣旨であります。
なお、本フォーラムは研究発表会ではなくて、各参加者にご披露いただく話題を中心にブレーンストーミングを行うと言った、あまりプログラムされない討論会であることを願っていることを申し添えます。